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【インタビュー】三上延さん
~ビブリア古書堂と大船・北鎌倉~

大船・北鎌倉を中心に、鎌倉を舞台にした小説「ビブリア古書堂の事件手帖」。今回、鎌倉文学館のご協力により、著者の三上延さんとお会いさせていただく機会が得られました。そこで、“ビブリア古書堂”的な大船・北鎌倉の魅力について、三上延さんにじっくりとうかがいたいと思います。

大船高校在学が原点

    「ビブリア古書堂の事件手帖」の舞台は、大船・北鎌倉が中心となっていますが、それはどのような理由からでしょうか?

企画段階から、この小説の舞台は馴染みのある場所にしようと思っていました。大船高校に通っていたので、最終的に候補に残ったのが大船・北鎌倉だったんですね。
大船高校在学中は、大船駅からバスに乗って、大船高校前のバス停で降りて通っていたことが多かったですね。日によっては、常楽時のほうから別のバスに乗ったり、歩いたりして通っていました。
そのようなこともあり、なじみ深い大船と北鎌倉が舞台ということになりました。

    「ビブリア古書堂の事件手帖」では、かなり正確に風景が描写されていますが、今でもこちらへいらっしゃる機会は多いのですか?

友達と半年に1回ぐらいは大船で飲み会をやっているので、それで来たりはしています。それだけでは完全ではないので、ある程度取材に来たりしています。
また、今は都内に住んでいるため自分の記憶と違う部分があって、その都度確認はとるようにしています。
例えば、第五巻の中で大船のモスバーガーが出てくるのですが、そのイメージや距離感などの描写は私自身が通っていたため、かなり正確に表現できているのだと思います。まあ、そこまで正確である必要はないんですが、書いていると自然とあのようになっちゃうんですね。

    ちなみに、いらっしゃったときによく立ち寄る場所などはありますか? 特に好きな場所はどちらでしょう。

以前は、島森書店によく立ち寄っていたのですが、今は無くなってしまいましたね。
でも、商店街はいつも立ち寄りますよ。それと、鳥恵ではよく飲んでいます。取材で大船に来たときの帰りに入れそうだったらサラッと入ってひとりで飲んでいます。

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大船・北鎌倉の“ビブリア古書堂”的な魅力

    大船高校に在学中の頃と、最近では、大船・北鎌倉に変化は感じますか? 良くなった点や悪くなった点など、何か感じることがありましたら、教えてください。

やっぱり、商店街に書店が無くなったというのが大きいですね。それと、私が高校在学時には駅ビルがなかったので、代ゼミのある通り(現 芸術館通り)が大船の中心という雰囲気がありました。駅ビルができたので大船の中心が駅ビルになったのかなというのが印象で、人の流れが当時とは変わった雰囲気があります。ただ、仲通商店街は以前と印象が変わらないですね。魚屋さんとかお店を見ていると、“懐かしいな”とか“戻ってきたな”という感じがします。
二年ぐらい前に、校内新聞の取材で大船高校を訪れたのですが、あまり変わっていなかったですね。高校の周辺は、さすがに家は増えていましたけれど、雰囲気は当時のままでした。大船高校から見える景色は、意外と変わっていなくてビックリしました。

    栞子さん的、または大輔さん的だと、大船・北鎌倉はどういう街でしょうか?

どちらもふたりが住んできた街なんですが、栞子は北鎌倉の静かなところで育ってきて、大輔のほうはもうちょっと庶民的な賑やかなところで育ってきたということになっています。
それぞれの性格は、確かに大船と北鎌倉の空気感を表していると思います。設定を逆にして、栞子が大船、大輔が北鎌倉という内容では、この物語は成立しなかったかもしれません。
今まで、特に意識はしていなかったですが、自然とそのようになったのでしょう。

    あと数巻で完結してしまうというウワサですが、今後、大船・北鎌倉はどのように登場してくるのでしょうか?

今までは、主人公の世代の“今”と、その親世代である70~80年代の話が中心となっています。
これからは、さらに前の世代の話を登場させようかなと思っています。大船だと撮影所があって活気があった時代の空気を作品の中に出していけたらなと思います。僕が知っているのが80年代以降なので、ちょっと調べるのが大変ですが。まだ、撮影所の時代からあるお店や食堂があるので、そのあたりをきちん反映できたらいいですね。

    最後に、大船・北鎌倉の人にメッセージを。

まずは、「ビブリア古書堂の事件手帖」を読んでいただいている方にお礼を申し上げます。
僕自身も大船高校在学中から大船や北鎌倉をよく利用していて、実際に歩いたりした経験や思い出みたいなものを、この小説を通じてみなさんと共有できたらいいなと思っています。今後も、大船や北鎌倉が登場してきますので、ぜひ読んでいただければと思います。

    お疲れのところお時間をいただきありがとうございました。

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三上延さんと「ビブリア古書堂の事件手帖」の紹介

プロフィール


三上 延  (みかみ えん)

1971年神奈川県横浜市生まれ。十歳で藤沢市に転居。市立中学から鎌倉市の県立高校(県立大船高校)へ進学。藤沢市の中古レコード店、古書店でアルバイト勤務。古書店での担当は、絶版ビデオ・映画パンフレット・絶版文庫・古書マンガなど。2002年デビュー。

『ビブリア古書堂の事件手帖』公式サイト[http://biblia.jp/] より

小説 「ビブリア古書堂の事件手帖」

北鎌倉駅の脇でひっそりと営業している古書店「ビブリア古書堂」。極度の人見知りで物静かな店主の篠川栞子は、古書に関してずば抜けた知識を有する。大船の食堂が実家であるもうひとりの主人公は五浦大輔。店主の篠川栞子と、ちょっとしたきっかけでビブリア古書堂で働くことになった五浦大輔が、大船・北鎌倉を中心に、古書にまつわる人間関係や謎、秘密を解き明かしていくビブリオミステリー。

ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~
ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~
ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~
ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~


三上延 著  ・  メディアワークス文庫 刊

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あとがき

今回は、3月16日に鎌倉市商工会議所地下ホールで開催された鎌倉文学館主催の講演会「自作を語る 三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』」の終了後にインタビューさせていただきました。講演会終了後でお疲れのところ、とても丁寧に、また時に楽しそうに、大船・北鎌倉のことをお話しいただけたのが、とても印象に残りました。講演会も含めて、非常の楽しいお話を伺うことができました。ありがとうございました。(今回使用した写真の一部は、その講演会中に撮影したものです)

実は、今回インタビューを担当させていただいた私も、この小説の大ファンのひとりです。この小説の第一巻が出たときに、実はそれほど興味がありませんでした。それは、「古書の知識で謎を解く」というようなことを聞かされており、古書の知識がない自分にとっては難しすぎるテーマと感じたからです。
しかし、しばらく経ったときに偶然にも第一巻を手に取る機会がありました。そして、はじめの数行でいきなりの大きなショックを受けたのです。そこには、いつも見ている景色、いつも感じている空気、いつも存在している空間が広がっていました。この生活圏である大船・北鎌倉が舞台だったのです。それ以来、この小説にどっぷりとはまってしまった私がこの小説を愛する理由は、他の方とは違うかもしれません。しかし、誰よりもこの小説の空気感に入り込むことができていると信じています。
この小説は現代が舞台です。第四巻は東日本大震災の直後から始まっているなど、まだ近い部分にある記憶の世界です。そのため、空間のみならず、時間までも小説の世界と共有できることが実感できます。そのような理由からも、大船・北鎌倉にお住まいに方には、是非とも読んでいただきたい一冊です。
.....と、そのような訳もあり、私の第一巻は初版ではなく第六版です。今では古書店を見つけるたびに初版を探すのが習慣になってしまいました。ある意味、この小説の本来の“側”に引き込まれようとしているのかもしれません。

記事・写真  小野勝彦

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